沈黙も、訪問時間。会話が苦手なわたしと、訪問看護の手順(生きていく手順書 Vol.10)
この記事は、シリーズで初めての「前編」です。
わたしはまだ、訪問看護を使っていません。使うかどうかも、決めていません。 でも、知りたかった。だから、使う前に調べました。
なぜ知りたかったか。 療養しながらのひとり暮らしには、「体調を定期的に見てくれる人が家に来る」という仕組みが、いつか要るかもしれないからです。
そして正直に言うと ── 調べる前のわたしは、こう思っていました。
「人と話すのが苦手なわたしには、苦痛でしかないんじゃないか?」
訪問看護って、何をしに来るのか
看護師が家に来て、見てくれるのは、こういうことです。
■ 体調(顔色・血圧・むくみなど) ■ 薬が合っているか、ちゃんと飲めているか ■ 眠れているか、食べられているか ■ こころの調子
うつなどの療養者向けには「精神科訪問看護」という形があります。 大事なのは、「観察」が仕事の芯だということ。おしゃべりは目的ではなく、手段のひとつです。
始まりは、役所ではなく診察室
訪問看護は、どこに電話すれば始まるのか。答えは意外なほど近くにありました。
主治医です。
医師が「訪問看護指示書」(精神科の場合は精神科訪問看護指示書)という紙を書くと、訪問看護が始まる仕組みです。 だから、扉を開ける言葉はこれだけ。
「訪問看護って、わたしも使えますか?」
いつもの診察室で、いつもの先生に、このひとことです。
お金のこと
医療保険が使えます(ふつうの受診と同じ負担割合)。
さらに、心療内科・精神科に通院している人は「自立支援医療(精神通院)」という制度が通れば、訪問看護も対象になって、自己負担は原則1割+所得に応じた月の上限つきになります。
くわしい条件は人によって違うので、正確なところは主治医とお住まいの市区町村で確認してください。 わたしも次の受診で、自立支援医療のことを相談する予定です。
形は、選べる
調べていて、いちばん「知らなかった」と思ったのはここです。
■ 玄関先で、という形もある(家に上げなくていい) ■ 散歩しながら、という形もある ■ 1回はだいたい30分ほど ■ 事情に合わせて、薬を持ってきてもらう形もある
「家に人を入れないといけないから無理」と思って諦めている方へ。 形は、相談できます。部屋を片付けてから、じゃなくていいのです。
わたしの正直な不安を、そのまま書きます
制度は分かりました。でも、わたしの中の不安は、制度の話ではありませんでした。
わたしは、人との会話がイヤでたまりません。 自分の気持ちを、言葉にできません。 いちばん苦手なのは「ねえ、どう思う?」「どっちが良い?」と聞かれること。 何を話せばいいのか、分からない。 家に人を入れるのも、緊張する。 そして ── わたしなんかが頼んでいいのか、という不安。
訪問看護は、わたしには苦痛でしかないのではないかな?
看護師のわたしが、患者のわたしに答える
ここで、透析室で20年働いたほうのわたしが、答えます。
訪問看護は、会話のサービスではありません。
看護師が見に来るのは、顔色、眠り、薬、体の動き。観察が芯です。 話さない患者さんのそばにいることに、看護師は慣れています。沈黙も、立派な訪問時間です。
そして、これは知っておいてほしいのですが ── 希望は、最初に条件として伝えていいのです。
「会話が苦手です。質問攻めにしないでほしいです」
これは、わがままではなく、契約のときに伝えていい大事な情報です。 「話したくない」と言えること自体が、看護師にとっては、あなたを知る手がかりになります。
ちなみに、耳が聞こえにくいわたしですが、ここは心配していません。 家は静かなので、補聴器がいちばんよく働く場所だからです。騒がしい窓口や待合室より、ずっと。
結び。「今はまだ」でいい
ここまで調べて、いまのわたしの正直な気持ちは ──
**「今はまだ」**です。
扉の場所は知りました。お金の道すじも、形が選べることも知りました。 それでも、今はまだ、頼まない。それがわたしの答えです。
でも、調べる前と後では、ぜんぜん違います。 「よく分からない怖いもの」だった訪問看護が、「いつでも開けられる扉」になりました。 いつか体がもっと動かなくなったとき、わたしは扉の場所を知っています。
知ることと、使うことは、別でいい。
この記事も、未来の私と、同じ場所に立つあなたへの手順書です。
ぼちぼち、いきましょう。
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ゆるら(透析看護師歴20年)
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